政治学者 高橋 肇のブログサイト。 政治学を中心とした学術的なテーマを掲載。 その他のテーマは、たかはしはじめ日記へ。

 

Hajime TAKAHASHI's Politics

09< 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30. 31.>11
10月の記事一覧
Posted on --:--:-- «Edit»
--
--/--
--
Category:スポンサー広告

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
tb: --     com: --
Posted on 15:28:58 «Edit»
2008
10/28
Tue
Category:政治学B(中京八事/2008秋・火3)

「政治学B」(中京八事/2008秋/火3)第5回 

政治学B
格差社会から成熟社会へ

2008年度秋学期
第5回(10/21)

山田昌弘『 希望格差社会』 を読む。

• 不安定化する社会の中で
• リスク化する日本社会
• 二極化する日本社会
• 戦後安定社会の構造
• 職業の不安定化
• 家族の不安定化
• 教育の不安定化(以上、前回)
• 希望の喪失(以下、今回)
• いま何ができるのか、すべきなのか


希望の喪失
• 生活の各領域で、リスク化と二極化が進展
– 職場、家族、教育の各分野で
• ⇒人々の心理や意識にも大きな影響
– 運に頼る
– やる気をそぎ、希望格差をもつにいたる

• 1995 年ごろからの社会的不安定化の中での若者の意識の変容


現代の若者の意識
• 二つの点で、従来と異なる。
– 現在も不安定だが、「将来も不安定」。
– 経済成長社会から「ゼロ成長社会」へ。

• 生き生きと生活できる社会・経済条件とは?
– 不安を生じさせる社会・経済条件とは?

– 現在の若者が晒されている状況と意識の関係とは?


希望とは?
• 「日本には何でもあるけど、希望だけがない」( 村上龍)
– 先進国共通の現象

– 努力が報われる見通し⇒希望
– 努力してもしなくても同じ⇒絶望
• 希望とは、心が未来に向かい、現在の行動とつながっているときに生じる感情


希望の歴史
• 前近代社会における宗教の機能
• 宗教改革による希望観の転換
– 現世と来世との予定調和説
• 近代における来世の消滅⇒希望の「現世」化
– 現世でむくわれる⇒希望
• 資本主義下での希望
• 革命思想による希望
• 「来世」の復活?


戦後から高度成長期までの希望
• 敗戦後
– 豊かな家族生活を築くという希望

• 職業を通じて(男性)
• 家事労働を通じて(女性)
• 教育を通じて(子供)

• バブル期直前までは希望に満ち溢れた社会


希望の消滅?
• 努力が報われない機会の増大
– リスク化の進展(「努力しても無駄になる」)
• 能力ある者のやる気を引き出すかもしれないが、能力が平均的な者のやる気を削ぐ(インセンティブ・ディバイド)
– 二極化の進展(「親に恵まれない」)

– 希望を持てる人と持てない人との格差の拡大



1998 年問題
• 実質GDP がマイナス1%
• 橋本内閣から小渕内閣へ
• 社会構造の「質的」転換の年
• 自殺者数の増大(中高年男性)
• リストラの進行(解雇、退職勧奨)
– ⇒二極化
• 中小零細企業の倒産

⇒「努力が報われない社会」(希望の二極化)


希望の二極化
• フリーターの増加
• できちゃった婚の増加
• 児童虐待の増加
• 不登校の増加
• 性感染症の増加
• 青少年の凶悪犯罪の増加
• 勉強する子としない子に二極化


希望からの逃避
• アディクションへの依存
– お金がかかる
• 新々宗教~来世での救済、テロ
• 自暴自棄型の犯罪
• 嫉妬の変貌(ジェラシー型からエンビー型へ)
– 妬み、恨み、不幸への道連れ
• 非社会的行動(「現実からの撤退」)
– 自殺、不登校、引きこもり(神経症型、脱落型)

リスクからの逃走
• 「苦労に耐える力」の衰退
– 希望なき社会の結果
• 苦労免疫の消失
– 小さな苦労と免疫
– 苦労を取り除く社会(免疫がつかない)
– いきなり苦労に晒される若者
• 強制と苦労の契機の消失
– 苦労からの逃走


パラサイトシングルとフリーター
• 家賃なし、家事なし、収入は自分の小遣い
– 結婚の苦労や生活リスクからの逃走

• フリーター
– 苦労するというリスクからの逃走

• 苦労する結婚生活、苦労する一人暮らし、苦労が多い仕事からの逃走
夢見るパラサイトシングル
• 結婚の夢、将来の夢、実現しない夢
– 夢を見続ける

• 自己実現の罠
– 妥協することは夢を捨てること
– 捨てられない夢、受け入れられない現実
• 職、結婚 、、、 今までの苦労


夢を支える親
• 子供と一緒に夢を見る親

• 夢見る若者の不良債権化

• 「理想的な結婚相手」「理想的な仕事」がみつかるまで現状を放置⇒いつかは破綻

• 夢から覚める日
  ⇒リスクはさらに深刻化している


日本のお荷物
• 年金掛け金の未納者
• 貧困層の大量発生
• 莫大な社会福祉費用


処方箋はあるのか?


社会改革の必要
• ネオ・リベラリズムの立場
– 自己責任、規制緩和、自由の拡大、個人主義の確立

• それに対抗する立場
– 安心社会の復活、企業責任の強調、前近代社会への回帰、地域や家父長的家族の復活、大きな政府

• 「自己責任強調」と「回顧主義」の危険

• 自由化論者の主張
• 自由化は失敗者も生み出す

• 自己責任の強調=希望の剥奪
– 経済的セーフティーネットと心理的セーフティーネット


統制は停滞を生む
• 後戻りは実現できない
• 高度成長期と同じ条件は存在しない

• 安心社会を目指し規制を強化すれば、やる気のある企業や人は海外に流出する


個人的対処の限界
• 個人の生活防衛、リスク対処
– ハウツー本、ノウハウ本
• 「個人にもっと能力や魅力をつけることで乗り切る」
• 「生活に対する考え方を変化させることで乗り切る」
• 「既存の制度にしがみつけ」
– 会社をやめるな、とにかく正社員になれ、など、オールドエコノミーへのしがみつきをアドバイス
⇒先行きは怪しい



努力の限界
• 「頭を使え、努力しろ」
– 就職予備校、結婚指南書、婚活サポート、私立学校人気の高まり

• リスク化、二極化への個人的対処
– さらなる金と努力⇒限界がある
– 報われる保証もない



考え方の転換
• 「生活に対する考え方を変えよう」
– 年収300 万円時代を生き抜く
– 分相応の生活
– スローライフ、ローカルライフ
• よほどの自信家でなければ無理なのでは?
• 勝ち組のもうひとつのライフスタイルにすぎないのでは?


公共的取り組みの再建
• リスク化、二極化は放置できない、だが、安心社会にも戻れない

• 個人的対処への公共的支援
– 耐えうる個人の創造
– 過大な期待のクールダウン
– コミュニケーション能力の向上
– 家族リスクに対応した社会保障制度


求められる総合性とスピード
• 対策の統合化、総合化
• スピードが大事
• 若者「逆年金」制度の構想


レポート課題(その1)
• 山田昌弘『 希望格差社会』 を読んで

• 提出日 11 月4 日( 火)  3限 授業時
– (遅れて提出の場合には、 11/ 11の 授業時まで受け付ける。その際の評点は80%とする。それ以降の提出は受け付けない。)

• レポートの提出様式に従うこと。
スポンサーサイト
tb: --    com: (0)
Posted on 14:23:59 «Edit»
2008
10/21
Tue
Category:政治学B(中京八事/2008秋・火3)

「政治学B」(中京八事/2008秋/火3)第4回 

政治学B
格差社会から成熟社会へ

2008年度秋学期
第4回(10/21)

高度成長期社会とは?
• 職業・家族・教育の安定システムである

– 企業の男性雇用の安定と収入増加(企業社会の安定)
– サラリーマン= 主婦型家族の安定と生活水準向上
– 学校教育による職業振り分けの成功と学歴上昇

– 中間集団の安定、成長による格差の緩和
(p.110-114)

• 中間集団の安定
– 家族と企業が個人を守っていた

• 成長による格差の緩和
– 格差は「量的」なものであり、いずれ「追いつく」という希望がもてた


• 高度成長期の終焉
– みんな一緒に豊かな生活を築くことができた時代の終焉
 ⇒中間集団を安定化させるコストの増大
 ⇒リスクの普遍化と個人化
(p.110-115)


山田昌弘『 希望格差社会』 を読む。

• 不安定化する社会の中で
• リスク化する日本社会
• 二極化する日本社会
• 戦後安定社会の構造(以上、前回)
• 職業の不安定化(以下、今回)
• 家族の不安定化
• 教育の不安定化
• 希望の喪失
• いま何ができるのか、すべきなのか


職業の不安定化
• 若者の職業の不安定化
– 「不況が原因」 ?、 「好きでやってる」?

• 「構造的」変動としての職業の不安定化
– 産業システムの構造変動に原因(⇒2 節)
– 「選ばざるを得ない」(⇒3 節)

• そもそも「職業(仕事)」とは何か?
(p.118-119)


人間にとって仕事とは何か?
• 二つの意味
– 収入としての仕事
– アイデンティティとしての仕事

(職業の不安定化)
⇒アイデンティティの危機
(⇒社会秩序の不安定化)
(p.120-121)


産業構造の転換(2 節)
• 産業構造の転換
– ポスト産業社会の到来( ベル)
– ニューエコノミー論( ライシュ)
– ネクストソサエティ論( ドラッカー)

 「大量生産・大量消費」⇒「商品の多様化」「安価化」

新しい産業形態⇒雇用の二極化
p.122-124


雇用の二極化
• クリエイティブで専門的知識をもった労働者
• マニュアル通りに動く単純労働者
⇒企業の雇用行動の変化

仕事の質の二極化⇒労働者のステイタスの二極化
仕事間の裂け目の出現

「中核的・専門的労働者」
(「サービス労働者」)
「低賃金で地位が不安定な単純労働者」

労働時間の二極化、世代問題としての二極化
p.124-135


夢見る使い捨て労働者
• フリーター時代の到来(1987年~)
• ニューエコノミーの進展
⇒若者の不安定就労 500万人以上

中高年の雇用の維持と若者の雇用状況の悪化
学歴や職種ごとの二極化

フリーターの男女差
夢見る使い捨て労働者
夢を支える親
フリーターの不良債権化
p.135-149


家族の不安定化
• 「絆」としての家族
• 「生活共同体」としての家族

• 高度成長期における家族の安定
– 絆として、快適生活追求の共同体として
– 「夫は仕事、妻は家事」⇒「豊かな生活」
条件としての、夫の収入の安定、夫婦関係の安定

「家族関係」と「夫の収入」⇒「リスク化」
「絆」と「生活」の「リスク化」
p.152-155


結婚のリスク化
• 未婚化の進展
– 生涯未婚率の上昇(1980年生まれは20%?)
– 年齢上昇とともに未婚リスクも上昇
– 未婚の理由
• 生活水準の下がる結婚はしない
• 魅力の不均等配分

• 離婚の増大
– 婚姻数の30%へ
• 「嫌いになる」機会の増大、「異性と出会う」機会の増大
p.155-163

• 夫の収入の不安定化

• サラリーマン= 主婦型家族の不安定化

• 家族機能の不充足
– 「絆」の感覚と「生活リスクの共同処理」の不充足
⇒家族形成を控えてリスク回避する人々( 結婚の先送り)
 リスクに陥り、人並みに生活できなくなる家族
p.162-


家族のリスク化
• 親子関係のリスク化
– 親の要介護化(開始時期、程度、期間が不明)
– 子育てのリスク化(パラサイト化、非行化)

• ライフコースの予測不可能化
– 家族リスクの普遍化
– 家族リスクの個人化

• 家族リスクへの個人的対策の困難性
– 独身保険、離婚保険の不可能
– 要介護リスク、子育てリスクへの対処の限界
p.165-167


家族の二極化
• 多様な家族形態
– 選び取ったライフスタイルか、強いられたライフスタイルか
– LSを「選べる人」と「強いられる人」への二極化

• 仕事能力、性的魅力、生まれによる二極化

• 家族形態による生活格差の拡大

• 「強者連合」と「漏れ落ちた弱者」

• パートナーを得られない人の増大

• 親子関係の二極化
p.167-173


家族のリスク化、二極化の帰結
• リスク先送り
• その結果としての、少子化

• 生活困難に陥る家族
– 二極化する「できちゃった婚」
– 子供への虐待
– 中高年の自殺

• リスクを守るはずの集団としての家族のリスク化
p.174-181


教育の不安定化
• 教育システムの機能
– 近代社会における教育
• 「階層上昇の手段」としての教育
• 「職業配分のための道具」としての教育
– 教育は手段であって目的ではない
• 前近代社会における教育
– 職業の自由選択と学校教育システム
• パイプラインシステムとしての戦後日本の学校教育
• パイプラインシステムによる階層上昇
– パイプラインの変更が困難
– パイプライン通過中の内容には期待せず
p.184-192


現代日本の教育問題
• パイプラインの機能不全
– パイプラインの漏れの受け皿としてのフリーター
– 中年のフリーター博士

– 女性パイプラインからの漏れ
• 一般職としての採用⇒収入の多い男性⇒職場結婚
• 一般職採用の抑制
• 収入の多い男性の減少
– 新たなパイプラインとしての各種・専門学校
p.192-199



教育システムのリスク化と二極化
• パイプラインを「流れ続ける人」と「漏れる人」への二極化

• 「漏れるリスク」の強要
• 安全なパイプラインと危険なパイプライン
• 親の影響力の増大

• 漏れの原因
– 社会経済構造の転換
• 職業の二極化
• 学卒者の過剰供給と期待切り下げの困難
p.199-206


学校教育システムの崩壊
• パイプラインシステム
– 「安心」、「健全なあきらめ」、「やる気の供給」
• 能力に見合った職に送り出す機能
• 過大な期待をあきらめさせる機能
• 階層上昇の機能

• パイプラインのリスク化、二極化
⇒「将来不安」、「過大な期待」、「やる気の喪失」
• 学歴に見合った職に就けなくなるリスク=将来不安
• あきらめる機会がない=過大な期待
• 階層上昇の期待の喪失=やる気の喪失

• 代替案の不在とドミノ崩壊へ
p.206-


山田昌弘『 希望格差社会』 を読む。

• 不安定化する社会の中で
• リスク化する日本社会
• 二極化する日本社会
• 戦後安定社会の構造(以上、前回)
• 職業の不安定化
• 家族の不安定化
• 教育の不安定化(以上、今回)
• 希望の喪失
• いま何ができるのか、すべきなのか


---
レポート課題(その1)
• 山田昌弘『 希望格差社会』 を読んで

• 提出日 11 月4 日( 火)  3限 授業時
– (遅れて提出の場合には、 11/ 11の 授業時まで受け付ける。その際の評点は80%とする。それ以降の提出は受け付けない。)

• レポートの提出様式に 従うこと。(本ブログ参照)
tb: --    com: (0)
Posted on 14:40:00 «Edit»
2008
10/14
Tue
Category:政治学B(中京八事/2008秋・火3)

「政治学B」(中京八事/2008秋/火3)第3回 

政治学B
格差社会から成熟社会へ

2008年度秋学期
第3回(10/14)
山田昌弘『 希望格差社会』 を読む。

• 不安定化する社会の中で
• リスク化する日本社会(以上、前回)
• 二極化する日本社会(以下、今回)
• 戦後安定社会の構造
• 職業の不安定化(以下、次回)
• 家族の不安定化
• 教育の不安定化
• 希望の喪失
• いま何ができるのか、すべきなのか

希望格差社会( 前回の復習)

• 「リスク」と「二極化」

「リスク化」( 将来の生活の予測可能性の低下と、不確実性の増大、終身雇用の崩壊、就職難、倒産、解雇、家族関係の不安定化 、未婚化、離婚の増加、年金財政破綻の懸念 、etc) (p.22-23)

「二極化」( 格差の拡大、 1990 年代半ばからの中流社会の崩壊、 「勝ち組」「負け組」への二極化、 正社員とフリーター、 寄生者と自立者、 「立場の格差」「質的格差」、 諸問題の二極化)(p.23-24)

希望格差社会( 前回の復習)
リスク化、二極化の進展→心理的不安定化

「希望の喪失によるやる気の喪失」

「経済的格差(量的格差)」は、「質的格差(立場の格差)」を生み、「心理的格差(希望格差)」につながる。
(p.25-26)

「現代日本社会では、生活に対する『保証』が急速に失われつつある」、「戦後日本が築いてきた安心社会の終焉」 (p.36)

二極化の進展
「量的格差」と「質的格差」
前近代社会における「格差」
• 「生まれた親の職業によって決まった。」
• 「家産によって生活水準が決定した。」
(個人の努力で生活水準が上下する余地は小)

• 「身分秩序としての社会秩序」(結婚も)
• 「伝統や宗教という納得の装置」
• 「格差の固定化」(p.68-69)

近代社会における「格差」
• 「親の職業を継がなくてよい社会、結婚も自由にできる社会」
• 「自由主義、資本主義社会は、企業社会」

( 「実力( 才能と努力) による、生活水準の上昇」の余地)
• 「機会が均等であれば、格差は実力の反映」< =「納得のイデオロギー」(p.69-70)

近代社会システムの問題点
• 親の格差による間接効果
「生まれによる影響は0にはならない。」

• 性役割分業社会
「女性の生活水準は、男性によって決まる」

• 弱者の出現
「実力による格差」
(p.71-72)

経済の高度成長期~格差縮小
• サラリーマン社会への移行
• 親による間接効果の縮減
• 将来の生活水準の上昇見込み
• 失業リスクの小ささ/再チャレンジの可能性

⇒「弱者の出現が最小限に抑えられていた」
(p.73-74)

現代社会の格差
• 二極化の進展
• 「格差社会」論の先鞭
– 橘木俊詔『 日本の経済格差』
日本の経済格差―所得と資産から考える (岩波新書)日本の経済格差―所得と資産から考える (岩波新書)
(1998/11)
橘木 俊詔

商品詳細を見る


格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

– 佐藤俊樹『 不平等社会日本』
不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)
(2000/06)
佐藤 俊樹

商品詳細を見る


⇔ 「質的な格差に触れていない点に不満」( 山田)

現代日本社会における二極化
1)職業に質的な格差が出現し拡大
2)各人の能力によらない生活水準格差
(p.74-76)

職業能力の質的格差
• 高度成長期の大量生産・大量消費からニューエコノミーへ
– 「専門的能力を必要とする職種」と「マニュアルどおりに働く職種」に、二極分化
– 他方、男女の労働者の質的格差の縮小
• 均等法などの影響も
• 専門的能力を必要とする職種につく女性と一生単純労働に従事する男性、高収入同士のカップルと低収入同士のカップル、etc…( 家族の多様化)
(p.76-77)

家族形態と生活水準の格差
• 「世帯の生活水準の豊かさは、もう夫の収入だけでは決まらない」時代に
– 妻が、専業主婦か、パートか、フルタイムか、で生活水準が違ってくる時代
– 親子の経済関係も変化( 「親を越える息子」から「豊かな親」の時代へ)
• 親の資産を相続できる子とできない子の格差
• 親から経済援助を受けられる子と受けられない子
– パラサイトシングルetc…
• 親の階層がこの職業的成功に与える間接効果の拡大( 勉学意欲の格差)
(p.78-80)

二極化の加速
• 職業領域の質的格差と家族形態による格差の拡大は相乗的に、二極化を加速する
– 高収入の夫と高収入の妻のカップリング
– 低収入同士のカップリング

– 豊かな親⇒子供への投資や援助
– 豊かでない親⇒単純労働者になる子

– 強者が強者を生み、弱者が弱者を生む( 自由)  
(p.80-82)

二極化の社会心理的影響
• 現在の二極化は、能力のある人のやる気を引き出すかもしれないが、能力がない(と自覚する)人のやる気を失わせる。
– 「インセンティブ・ディバイド」 の格差
• 努力によらない格差(=家族の利用可能性による格差)
– 努力以外で決まる格差には、納得できず不満が募る
• ⇒希望格差の拡大へ  (p.82-83)

リスク化と二極化の相互連関
– 安心社会からリスク社会へ( リスクの普遍化)
• リスクへの対応能力( 資源) の格差
• ⇒リスクの普遍化は二極化を加速する

– リスクの個人化も二極化を加速する

• 「弱者」には、連帯も、集合的な反抗も閉ざされている

戦後安定社会の構造
• 高度成長期を懐かしむ言説の増加
– 「明るい時代」だった
• 低い離婚率
• 低い非嫡出子率
• 合計特殊出生率も安定

• 安心社会形成の理由はなにか?
• 安心社会形成の条件はなにか?
(p.88-90)

高度成長期(p.90-91)
– 選択の自由は拡大したが、生活リスクは小さく、将来が予測可能だった
– 心理的な生活格差も小さく、「追いつく」意識があった

「自由の拡大と確実性」「経済成長と格差縮小」
– 企業の男性雇用の安定と収入増加(企業社会の安定)
– サラリーマン= 主婦型家族の安定と生活水準向上
– 学校教育による職業振り分けの成功と学歴上昇

1.企業社会の発展
• 大量生産・大量消費の時代
– 大企業の勃興とサラリーマンの増加
• 雇用安定と収入増大
– 男性の雇用の安定(全雇用)
• 年功序列、終身雇用、企業内労組、社内福祉
• 企業内訓練
– 従業員主義、終身雇用、年功序列、「会社人間」
(p.92-93)
• 男性従業員はほぼ誰もが昇進できた
• 昇進スピードや到達点の格差はあっても、質的格差ではなかった
• 周縁労働は女性や出稼ぎ、アルバイトが担った(海外では外国人や移民労働者)
• 企業でまじめに働きさえすれば、仕事能力が身につき、安定し、収入が増大するというメカニズム
– 大量生産・大量消費という産業構造
– 政府規制、官僚指導、系列、下請け、業界団体
(p.93-98)

2.サラリーマン=主婦型家族の安定
• 高度成長期企業における男性労働
• 専業主婦の誕生と増大
– 「夫は仕事、妻は家事・育児」という家族モデルへ

• 安定の理由
– 男性雇用の安定と収入の増大の見込み
– 家族関係の安定(「生活共同体」としての家族の安定)
(p.98-)
• 家族的リスクの極小化
– いわば、男女ともに「永久就職」が可能だった時代
• 婚姻率の高さ(実に95% !)
• 結婚しない方がリスクが高い
• 婚姻前の生活水準の低さ
• 交際範囲の狭さ
• 「見合い」という手段
• 離婚率の低さ
• 再婚への希望
(p.99-100)
• 社会保障制度の整備
– 生命保険の伸び(夫が死んだ場合の保険)
– 健康保険、年金制度の整備(特定の家族モデルを前提)
– 遺族厚生年金
– 税制と給与制度(特定の家族モデルを前提)
• 配偶者控除や扶養手当
• 家族給与(生活給与)としての性格
(p.100-101)
• 家族モデルから外れた人に対する社会福祉
– 保育所、母子家庭支援

• 賃金格差の縮小、賃金上昇の期待

• 生活の豊かさの進展

• 夫婦合算した収入の格差<男性の給与格差
(p.101-102)

3.学校教育制度の成功
• 家族と職業をつなぐ制度としての学校

• 職業選択の自由と学校制度による選別
– 医者( 医学部) 、弁護士( 法学部) 、などなど

• 受験競争の効用
– 受験競争は、青少年をリスクなく職業に振り分けるための優れた制度
• パイプラインシステム (p.103-104)
• 安心と希望と合理的あきらめのシステム

– 職に就けないリスクの最小化( 安心化)
– 努力が報われる=徐々にあきらめさせる

– 女性にとっては結婚市場における相場の形成

• 学歴の世代間上昇( 学歴の高度成長期)
(p.104-110)

高度成長期社会とは?
• 職業・家族・教育の安定システムである

– 企業の男性雇用の安定と収入増加(企業社会の安定)
– サラリーマン= 主婦型家族の安定と生活水準向上
– 学校教育による職業振り分けの成功と学歴上昇

– 中間集団の安定、成長による格差の緩和
(p.110-114)

• 中間集団の安定
– 家族と企業が個人を守っていた

• 成長による格差の緩和
– 格差は「量的」なものであり、いずれ「追いつく」という希望がもてた

• 高度成長期の終焉
– みんな一緒に豊かな生活を築くことができた時代の終焉

 ⇒中間集団を安定化させるコストの増大
 ⇒リスクの普遍化と個人化
(p.110-115)

山田昌弘『 希望格差社会』 を読む。

• 不安定化する社会の中で
• リスク化する日本社会(以上、前回)
• 二極化する日本社会
• 戦後安定社会の構造(以上、今回)
• 職業の不安定化(以下、次回)
• 家族の不安定化
• 教育の不安定化
• 希望の喪失
• いま何ができるのか、すべきなのか

---
レポート課題(その1)
• 山田昌弘『 希望格差社会』 を読んで

• 提出日 11 月4 日( 火)  3限 授業時
– (遅れて提出の場合には、 11/ 11の 授業時まで受け付ける。その際の評点は80%とする。それ以降の提出は受け付けない。)

レポートの提出様式に 従うこと。
tb: --    com: (0)
Posted on 14:30:18 «Edit»
2008
10/07
Tue
Category:政治学B(中京八事/2008秋・火3)

「政治学B」(中京八事/2008秋/火3)第2回 

政治学B
格差社会から成熟社会へ

2008年度秋学期
第2回(10/7)
市場のグローバル化と全面化が進展するなかで進行する格差社会化の現実を認識する

地球社会の成熟化に向けた国家や世界社会の課題について考察する

山田昌弘『 希望格差社会』 を読む。
• 不安定化する社会の中で
• リスク化する日本社会(以上、今回)
• 二極化する日本社会
• 戦後安定社会の構造
• 職業の不安定化
• 家族の不安定化
• 教育の不安定化
• 希望の喪失
• いま何ができるのか、すべきなのか
先が見えない時代?
• 「五年後の生活の見通しも立たないのに、50 年後の生活の心配ができますか?」(p.11)
• 「老後のことを考えられない、考えたくない若者の増加」?(p.12)

• 将来の心配をしなくてもよかった右肩上がりの時代 。。。
希望格差社会
• 「日本社会は、将来に希望がもてる人と将来に絶望している人に分裂していくプロセスに入っているのではないか。」

• 「これを私は、『 希望格差社会』 と名付けたい。」(p.14)
不安定化する日本社会
• パラサイトシングル、親と同居する未婚者、できちゃった婚、フリーター、引きこもり、不登校、児童虐待などの増加(p.19-20)
• 未来に希望を持てない社会(p.21-22)

• 「リスク」と「二極化」
リスク化
• 将来の生活の予測可能性の低下と、不確実性の増大
– 終身雇用の崩壊、就職難、倒産、解雇
• 家族関係の不安定化
– 未婚化、離婚の増加、年金財政破綻の懸念
• etc
• ウルリッヒ・ベック『 リスク社会の到来』 (邦訳『 危険社会』 )
(p.22-23)
二極化
• 格差の拡大
• 1990 年代半ばからの中流社会の崩壊
• 「勝ち組」「負け組」への二極化
• 正社員とフリーター
• 寄生者と自立者
• 「立場の格差」「質的格差」
• 諸問題の二極化
(p.23-24)
心理的不安定化
• リスク化、二極化の進展による不安の増大
• 「将来の生活破綻や、生活水準低下への不安」
• 「希望の喪失によるやる気の喪失」

• 「経済的格差(量的格差)」は「質的格差(立場の格差)」を生み、「心理的格差(希望格差)」につながる。
(p.25-26)
1998 年。
• 不安意識が一気に表面化。
• 中年男性の自殺率の急増。
• 青少年犯罪、引きこもり、不登校の増加。
• まったく勉強しない中高生の急増。

• リスク化、二極化が若者の心理に与える影響
• ⇒将来の日本の社会秩序を脅かす可能性
(p.26-27)
世界史的転換期の中の日本
• 戦後国際社会の枠組みの変化
• グローバリゼーション、IT化、ネットワーク化

• 先進資本主義諸国に共通する現象としての、不安拡大と希望喪失

(p.27-28)
近代社会の構造転換
• ギデンス『 暴走する世界』
• バウマン『 液状化する近代』
• ベック『 リスク社会』
               ・・・などなど。

• 社会の豊かさと人々の自由度の増大
• ⇒リスク化と二極化
(p.29-31)
本書の構成
• 2 章「リスク化」
• 3 章「二極化」
• 4 章「戦後日本社会が安定していた理由」
• 5 章「職業世界の変化」
• 6 章「家族生活の変化」
• 7 章「教育の分野における変化」
• 8 章「人々の意識への影響」
• 9 章「対応策」
リスク化する日本社会
• 「現代日本社会では、生活に対する『保証』が急速に失われつつある」、「戦後日本が築いてきた安心社会の終焉」 (p.36)

• 「リスク」=「何かを選択するときに、生起する可能性がある危険」(p.38)

• 「原子爆弾はデンジャーだが、原子力発電はリスク」(p.38)
• 「不確実性」と「リスク」(p.38-39)
生活リスク
• 「人並みの生活ができなくなる危険性」(p.39)
• 相対的基準としての「人並み」

• 「前近代(伝統)社会における危険」と「外部リスク」
• 「近代社会」=「自然の制御」と「伝統からの離脱」(外部リスクの制御)
• ⇒「外部リスクの減少」と「選択に伴うリスクの登場」
• 「外部リスクの制御がリスクを生む」 (p.42-43)
選択に伴うリスク
• 職業選択の自由
• ⇒職に就けないリスク

• 配偶者選択の自由、離婚の自由
• ⇒結婚できないリスク、離婚されるリスク

• 教育システムの変化
(p.43-)
選択に伴うリスクと人々の意識
• 秩序破壊としての自己実現から、賞賛されるものとしての自己実現へ
• ⇒自己実現できない=自己不全感や絶望感

• 「自己責任」概念の発生

• ⇒個人の感情状態に負荷、自己実現の強要
(p.46)
高度成長期から1990年までのリスク
• 高度成長期~外部リスクの削減、小さな内部リスク
– 失業リスクの小ささ、見合い結婚、離婚の減少
• ⇒「高望み」や「冒険」さえしなければ「安定した生活」

• 将来予測と生活設計がしやすい時代
(p.47-)
リスクの普遍化
• 1990 年ごろから「リスクの普遍化」

• リスク自体の性格変化
– リスクの普遍化~「選択を強要される社会」へ
• 生活リスクの変遷 ( 概念図p.53)
• リスクに陥ったときの対処法の変化
– リスクの個人化(⇒自己責任の強調)
(p.49-)
リスクの個人化
• 中間集団が個人を守れ(守ら)なくなった

• 中間集団のリスク化

• 連帯の困難

• 保険のリスク化
(p.54-)
リスクと自己責任
• リスクに対する責任の個人化

• ⇒社会意識の変容
– 「運頼み」の人間の出現
– 「自己責任」からの逃避

山田昌弘『 希望格差社会』 を読む。
• 不安定化する社会の中で
• リスク化する日本社会(以上、今回)
• 二極化する日本社会(以下、次回)
• 戦後安定社会の構造
• 職業の不安定化
• 家族の不安定化
• 教育の不安定化
• 希望の喪失
• いま何ができるのか、すべきなのか
tb: --    com: (0)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。